『みどりの香り -植物の偉大なる知恵-』
畑中顯和 著
丸善
題名に惹かれて図書館で手に取ったけれど、香りを構成する化学式や香り成分のカタカナの名前がたくさん出ていたので、なんとなく斜め読みしてしまった本。
化学式は難しいながらも、興味深いことがいくつもあった。
植物は動かなくても、「生存競争」をしながら自らの生きる環境を維持しながら生活している。その「競争」とは、昆虫を誘引したり、植物体の保護作用をするために、光合成をして二次代謝生産物として香りなどを出すこともひとつ。
その香りには、先天性のものと後天性のものがあるのだそうだ。先天性のものとはもともと自然にある植物の「青臭さ」のようなもの。後天性のものは学習して作られるようになったもので、害虫や病害菌への防御対策、氷河期などの種絶滅期を生き抜くために作り出したテルペン類などは植物の知恵の産物といえる。
香りというのは、炭素数6個で構成され、揮発性をもつという共通点があり、その炭素の構造が異なるだけで香りの質が変わる。環境からの刺激で酵素の働く力が変わり、酵素活性のバランスで濃度が変わって香り度数も異なってくるらしい。植物の環境適応能力ってやはりすごい。
ほか、植物の香りの化学構造と官能相関や、生態系の中での香りの役割(殺菌、免疫、情報伝達、警戒、防御など)の図解も面白い。
なぜ、その植物はこのような香りを出しているのかを知ることは、その植物の魅力をもっと知るきっかけになる。化学式に苦手な人も一度は目を通してみてよい本かも。
0 Comments
You can be the first to comment!