恋の媚薬 「ニオイスミレ」

2011年6月13日

ニオイスミレすっと首をあげたような小さな小さな花が可憐なニオイスミレ。スイートバイオレットとも呼ばれます。名前のとおり、甘い香りが特徴です。ハート型の濃い緑色の葉は常緑。寒い冬の時期も葉を落とさず、品種や環境によっては、真冬でも花を咲かせているので、冬の庭の大事な存在です。

この花は、シェイクスピアの「夏の夜の夢」のなかで、恋の媚薬として登場しています。スミレの花びらを搾り、そのしずくを静かに眠っている好きな人のまぶたにそっと垂らして、目覚めるのを待ちましょう。目が覚めたその人は、最初に目にした人に恋をすると言われています。そんなロマンチックな言い伝えがあるハーブです。

■ ニオイスミレの利用法と効能

春先にニオイスミレをたっぷり使った小さな花束は、甘い香りの素敵な贈り物。紅茶に浮かべれば、ほんのりと甘い香りを楽しめます。エディブルフラワーとして、サラダに散らしたり、砂糖漬けにしてケーキなどお菓子の飾りづけにも使えます。ニオイスミレの砂糖漬けは、そのまま食べてもおいしいのが魅力です。香りがよい咲いたばかりの花をお酒につけるのもよいです。

また、花や葉、根を使って薬用効果を期待できます。花や葉を使ったハーブティは、口内炎、呼吸器の疾患に効き、咳・痰などをやわらげます。催眠作用があるので、眠れない夜や、風邪かなという時に飲んでみましょう。いらいらした頭痛もすーっとひきながら、穏やかに眠りにつけます。

花のシロップはやさしくおなかに効く下剤になります。ハーブティでも効果があるので、おなかのゆるい方は飲みすぎないように。

乾燥させた根の浸出液や煎じ液は、気管支炎に効果があると言われます。

ニオイスミレ■ ニオイスミレの育て方

耐寒性があり、日陰でも育ち、ほふく性でどんどん増える、育てやすいハーブです。大きな木の下、ちょっとじめっとして日あたりの悪い場所に何を植えようか悩んでいた方にはぴったり。

肥沃な湿りけのある土に植え、乾燥しないように気をつければ、鉢植えでも地植えでも大丈夫です。増えたら春に株分けします。いつのまにかびっくりするほど増えるのが特徴でしょうか。ハート型の葉の間からすっとのびた細い茎のところどころに根が出て、ひょろーりひょろーりと増えていきます。地中でも横へ横へと根を伸ばしています。

耐寒性があるので、冬の間も室内に取り込む必要はありません。暖房のきいた部屋に入れると、温度が高すぎて花が咲かなくなってしまいます。春の終わり頃につく、閉鎖花と呼ばれる花の咲かない蕾は取り除きましょう。

宿根ビオラという品種があります。花期は長いけど、一年草でちょっと寂しい気持ちのするビオラを、耐寒性のある宿根草であるニオイスミレと交配させて、宿根ビオラにしたものだそうです。見た目はまったく普通のビオラです。ニオイスミレに比べて大きめの花のビオラは、玄関先に映えます。でも、可憐なニオイスミレの花は、和の器にもあうしっとりとした上品さがあります。ぜひ育ててみてください。

※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。

カテゴリ: ハーブの横顔  |  0 Comments
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