小さな竜 「タラゴン」

2011年6月13日

クリームチーズ、バターなどの乳製品や、卵料理に加えるとぐっと風味が増しておいしくなるタラゴン。フランス語では「エストラゴン」と呼ばれています。

エストラゴンとは、小さな竜という意味。その由来は、まっすぐに伸びた枝につく細い葉が竜の牙に、いや竜の舌に似ているから、またはらせん状にねじれた茶色い根が、とぐろを巻いたヘビのように見えるからだと言われています。いずれにしても小さな小さなかわいい竜ですね。

今では料理の風味づけとしての印象が強いのですが、古くから料理以外にさまざまに用いられた古い歴史を持つハーブです。古代ギリシャ時代には、毒ヘビや狂犬などの動物にかまれた時や、スズメバチなどに刺された時の解毒に使われていました。ローマ時代には、疲労回復にも使われたとか。

■ タラゴンの利用法と効能

1592年に出版された”The Herbal : Or, General History of Plants(本蔵書または植物の話)”で知られる英国のジョン・ジェラードによると、タラゴンには口臭を消す作用があり、また、苦味の強い薬を飲みやすくする作用があると記されています。

料理以外で現在にも共通する利用法は、食欲増進効果。消化を助け、胃を強くしたり、強壮効果もあります。甘い香りのエッセンシャルオイルは、生理痛に効きます。

お料理では、すでにいろいろと活用されている方も多いでしょうか。タルタルソースやマヨネーズ、ドレッシングを作るときに加えたり、スクランブルエッグ、オムレツなどの卵料理に刻んで入れます。煮込み料理やスープの仕上げに加えると奥行きのある味になります。

サラダに散らしてそのままでも、またはクリームチーズのサンドイッチに少し加えると、いつもと違う風味になります。食用増進効果があるので、暑さで食欲のない時に、すっきり冷やした白ワインと、チーズとタラゴンを載せた小さなカナッペのオードブルで食欲を刺激するのもよいでしょう。

香りのよい時期に収穫したひと枝をビネガーやオイルにつけたり、刻んだ葉をバターやチーズに練りこんだものを作って保存しておくと、肉、魚、野菜料理どちらにも活躍し、重宝します。フィーヌゼルブは、チャービル、パセリとタラゴンを使って作ります。

もうひとつおまけにタラゴンの不思議な効き目を。長時間立ち仕事の多い方は、生のタラゴンを靴の中に敷いてみてください。足の疲れがいつもより楽になるそうです。

■ タラゴンの育て方

日あたりと水はけのよい場所を選び、軽くて肥沃な土に植えます。5月ごろからどんどん枝を伸ばし始めます。梅雨時期は日照不足でヒョロヒョロと徒長しがちなので、支柱を立てます。25センチほどの高さになったら適宜摘心して側枝を伸ばします。

夏の間は乾燥と暑さに気をつけます。夏をうまく越して、一番香りのよい晩夏に収穫を楽しみましょう。冬になると地上部は枯れますが、春には株元から新しい芽がたくさん出てくるので腐葉土やワラをかぶせて寒さから守ってあげます。新芽が次々に伸び始める春は嬉しくてワクワクします。

不稔性で花が開かないフレンチタラゴンは、挿し木をしたり株分けをして増やします。ロシアンタラゴンよりも、より風味のよいフレンチタラゴンは、2~3年おきに株分けして植え替えると香りがさらによくなります。

ロシアンタラゴンは春か秋に種まきします。ロシアンタラゴンは一度植えた場所で育て続けると風味がよくなるので、種まきをして株をどんどん大きく育てるのも楽しみですね。

※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。

カテゴリ: ハーブの横顔  |  0 Comments
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