細く繊細な葉が美しく、傘をパッと開いたような愛らしい黄色い花をつけるディル。フェンネルと似ているので区別がしにくいという方もいらっしゃるでしょうか。花・葉のつき方、中空の茎で見分けることができます。
ディルという名前は、古代ノルウェー語の”dilla”に由来しています。この言葉は『鎮める、なだめる』を意味しており、ディルはその名前のとおりの薬効を持っています。むずかったり夜泣きをする赤ちゃんに、ディルの種を煎じたお湯を飲ませたり、ディルをつぶした香りのよい液を胸元にこすりつけるとよいといわれてきました。
■ ディルの利用法と効能
夜泣きの赤ちゃんだけでなく、大人たちにももちろん昔から薬効を発揮してきました。エジプト人は頭痛を鎮める治療薬として用いたそうです。17世紀ごろのヨーロッパから現代まで、消化不良の腹痛どめや消化促進にもひと役かっているハーブです。
ピクルスに一緒に漬け込んだり、お料理にも活躍します。種だけ、葉ごと、花ごとホワイトワイン・ビネガーやオリーブオイルに漬け、ディル・ビネガーやディル・オイルを作っておくと、ソース、サラダのドレッシングづくりに重宝します。
魚、チーズ、野菜料理にも相性がぴったり。いつものポテトサラダに香りのよいディルのやわらかい葉を刻んで混ぜてみてください。ちょっと刺激のある香りがおいしさをひきたてます。
ほかにも、チーズやサーモンのサンドイッチやカナッペに一枝はさんだりのせたり。刻んだ葉をバターやチーズに練りこんで冷凍保存しておき、朝のたまご料理に使ってもおいしいです。今までのお料理にちょっと加えるだけで、十分その芳香を楽しむことができます。
ディルには女性に嬉しいこんな効能もあります。バルコニーや庭での土いじりって、爪をいためますよね。そんなときは、ディルの種をつぶして煮出した抽出液に10分指先を浸します。爪を丈夫にする美容液になります。
また、ディルは愛の媚薬にもなるとか。ワインにひたして飲めば、情熱を高めるのだそうです。不思議なおまじないハーブでもあるのですね。
■ ディルの育て方
一年で大きく育つディルは種から育てやすいことも魅力です。
春まき、秋まきどちらも可能なハーブです。秋にまけば、翌春5月には大きく育ち、たくさんの花を咲かせてたっぷり種を収穫できるので、秋まきがおすすめです。種にはミネラル成分が豊富に含まれています。
ディルはパセリと同じように直根性なので、移植を嫌います。じかまきで育てます。ポットまきをする場合は、苗が小さいうちに本植すれば問題はありません。1週間ほどで発芽するので、しっかり日に当てて間引きます。冬の間、根元を持ち上げる霜に気をつけて土盛りをして、陽だまりで育て、春になってぐんぐん伸び始めたら肥料をあげましょう。
キッチンガーデンを楽しんでいらっしゃる方は、レタスやキャベツ、キュウリと一緒にディルを植えてみてください。野菜を丈夫に育て、アオムシを一手に引き受けてくれるので、葉もの野菜を守ってくれます。ただし、フェンネルの近くには植えないこと。交配して、どちらも同じような香りになってしまいます。
葉の収穫は若いやわらかいときに。種は茶色くなるまでおき、根ごとほりあげるか、茎ごと切って逆さに吊るして乾燥させます。コロコロと種が落ちるので、ザルや布を敷くか紙袋をかぶせておけば安心。葉は冷凍保存します。
※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。
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