実はロマンティックなハーブ 「バジル」

2011年6月13日

バジルひと鉢あれば、夏の食卓がぐんと楽しくなるバジル。高温多湿の日本の夏が苦手なハーブが多いなか、バジルは暑さに強く乾燥が苦手なので、元気に育ってくれます。ペーストやサラダ、パスタなどお料理にも大活躍。このように、どうしても『食べる』ことに結びつくバジルですが、実はとてもロマンティックなハーブでもあるのです。

みずみずしいグリーンの葉を持つバジルは、昔から愛情のしるしやシンボルとされてきました。女性からバジルの一枝、または新しい芽を受け取った男性は彼女を永遠に愛し、また、プロポーズする際にバジルを手渡すことのできた男性は、彼女から深く愛されるようになるといわれています。バジルを上手に育てていれば、恋人がいつも会いに来てくれるという素敵な言い伝えも・・・。ぜひひと鉢欲しくなってしまいますね。

宗教的に神聖な植物とされているハーブでもあります。キリスト復活後、その墓のまわりにバジルが生えたという伝説から、ギリシャ正教では祭壇をバジルで飾り、聖水にはバジルを配合するところがあり、インドでも神のハーブとして崇められ、昔は宮廷や法廷の儀式にバジルが欠かせなかったそうです。

■ バジルの利用法と効能

『あじわう』楽しみは、もう実践されている方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。バジル、パルミジャーノ(またはペコリーノ・チーズ)、松の実、オリーブオイル、ニンニク、塩で作るジェノヴェーゼ・ソースはもうおなじみです。チーズを入れないで冷凍保存すれば、いつでもおいしいソースを食卓に出せます。モッツァレラ・チーズとトマトの薄切りにバジルの葉をのせたカプレーゼもイタリア料理のオードブルの定番。トマトとの相性が抜群のハーブです。

相性がよいのはお味だけではないのが面白い、トマトとバジルのコンビ。なんと近くに植えるとお互いによく育ち、おいしくなる効果があります。一緒に食べておいしいものは、育てるのも近くがよいのだとか。

利用は、なんといってもフレッシュがおすすめ。保存はバジルソースにするか、オイルにつけて。製氷皿に刻んだバジルを入れて、お水を少しだけ入れて凍らせる方法もあります。

日本や中国では昔から『目ぼうき』と呼ばれ、目薬として使われてきました。バジルの種を水につけておくと種のまわりがゼリーのようなもので覆われてきます。それを使って目の中にゴミをとるのに使ったそうです。バジルシードという名前で中華食材店でデザートの材料として販売されていますが、やはりこれも水につけ、ゼリー状になったものを頂きます。バジルシード入りヨーグルトが隠れた人気になっていたこともありました。

バジルの薬効にも注目してみましょう。バジル・ティは風邪のひき始めに効果があるとか。風邪気味の夜は熱々のバジル・ティを飲んでベッドにもぐりこむとよいそうです。また、激しい咳にはバジルの煎じ液を飲み、鼻づまりにはバジルの匂いをかぐとすっきり。粘膜の炎症を抑える効果があります。胃腸がもたれ落ち着かないときには、消化を助ける役割もしてくれます。

また、古代、ギリシャ人とローマ人は精神安定剤としてバジルの葉を噛んだと言い伝えられています。バジルのエッセンシャルオイルには偏頭痛を抑えたり、緊張をやわらげる効果があり、頭をすっきりとさせてくれます。疲れた夜、気分の晴れない夜には、お風呂にバジルの葉をしばって浮かべたり、エッセンシャルオイルを数滴たらすと疲労回復、気分転換できます。月経前の落ち着かない気持ちや月経痛を抑える効果もあるので、女性にうれしいハーブでもあります。ただし、妊娠初期の使用は避けるようにしてください。

■ バジルの育て方

バジルは種からでも上手に育てられるハーブです。ただ、寒いのは大の苦手。あたたかくなってから種まきしましょう。大きな鉢にたくさんまいて育てれば、自家製バジル・ソースをたっぷり作ることができます。種まきについて、面白い言い伝えがあります。バジルの種は、ののしりながらまくとよく育つそうです。本当でしょうか。試された方はぜひご報告ください。

育てる場所は、日当たりがよく水はけのよいところで。よい香りの葉には虫もつきやすいので、お庭がある方も鉢で育て、なるべく目の届く場所で管理するのをおすすめします。

他のハーブにくらべ、水をたくさん欲し、肥沃な土を好むことが特徴。乾燥しないよう気をつけます。太陽によくあて、水をたっぷりあげれば、どんどん育つので、上手に摘心しながら利用してわき芽を伸ばし、こんもりと育てます。たくさん収穫するのは花が咲き始めるころに。株元から2分の1か3分の1ぐらいのところで思い切って刈り込み、追肥しておけば、また元気に茂ってきます。

古代ローマ人は、バジルを豊作の象徴としていたそうです。美しい若い女性が手入れをするとよく育つともいわれていました。『バジル』が若者の名前に由来すると言われることに結びついているのでしょうか。

※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。

カテゴリ: ハーブの横顔  |  0 Comments
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