やさしい愛の夢を 「マージョラム」

2011年6月13日

マージョラムマージョラムは、香りやかたちがオレガノと似ているため、長い間、ワイルド・マージョラムを別名「オレガノ」と呼び、同じものとして考えられてきました。しかし、今では、オレガノとマージョラムは別のものと区別されるようになっています。

シソ科のマージョラムは、甘いハッカのような香りがするので、和名では「ハナハッカ」と呼ばれることもあります。また、「マヨナラ」、フランス名では「マルジョレーヌ」と優美な響きの名前も持ちます。

魔女たちが活躍していた時代、マージョラムは亡くなった人々の魂を鎮めると考えられていました。そのため、お墓のまわりにたくさん植えられたと言われます。そんな言い伝えから、家の入口の近くにマージョラムを植えたり、マージョラムの束を窓の外に向かって放り投げると、悪魔を取り払うことができるというおまじないがヨーロッパにはあるそうです。

マージョラムという名のハーブは、実はシェイクスピアのいくつかの物語にも登場しています。ふたりの娘に裏切られ、荒野でさまよう狂気のリア王が合言葉にしたのが、スイート・マージョラム。冬物語で、パーディタが中年の男性たちに贈った花々に含まれていたマヨラナ。シェイクスピアは、植物の名前ひとつで登場人物のセンスや心までも表現しているのです。

■ マージョラムの利用法と効能

古代の人々にも愛された香りは、お風呂に入れるとリラックス効果があります。エッセンシャル・オイルは関節炎、筋肉痛、捻挫や打撲に効きます。いつもよりたくさんからだを動かして疲れた夜は、マージョラムのお風呂にゆったりとつかって、やさしくマッサージしてみてください。

また、香りには催眠効果があるので、枕に入れてピローポプリとして使います。マージョラムのピローポプリで眠ると、「やさしい愛」の夢を見られるとか。今夜からさっそく試したくなりますね。

消毒効果も高く、ペストの流行った時代には消毒薬として用いられました。煎じた汁やハーブティでうがいをするとのどの消毒ができ、のどの痛みがやわらぎます。歯が痛いとき、頭が痛いときには鎮痛効果があります。女性の月経痛をやわらげる効果もあります。妊娠初期には使用しないようご注意ください。

もし、初めてハーブを育てるとしたら、みなさんはどんなものをお植えになりますか? もちろん用途によって異なりますが、お料理用ハーブを育てるのなら、タイム、ローズマリー、セージが基本の3つ。そして次に必ず欲しいのがマージョラムなのです。

マージョラムは、そのまま刻んでサラダに入れたり、お魚料理に使います。ソーセージやパテを作るときに入れたり、鶏肉・豚肉・牛肉のローストにすりこんでもとびきりおいしくなります。バターと一緒にあえて、じゃがいもや卵料理の風味づけにしてもおいしいです。

マージョラム■ マージョラムの育て方

育てやすく、冬もマルチングしてやれば寒さをしのいでくれるし、一度は育てて利用してみたいハーブです。

マージョラムは、日当たりと水はけのよいところを好みます。春に種をじか蒔きし、1週間ほどして芽が出て、込み合ってきたら間引きします。温度を15~20度に保てばいつでも発芽するので、春先に早めに室内でまいて管理するのも方法です。苗は徒長して倒れやすいので、密植と日照不足に気をつけます。

挿し木も簡単なので、香りのよい株をお持ちのお知り合いがいたら、ひと枝分けてもらいましょう。同じ香りの株ができるので、ちょっと得をした気分。

マージョラムは、養分が豊富なアルカリの土で育てると香りがよくなります。ただし、梅雨の時期に窒素分の多い肥料をあげすぎると、徒長がすすんで倒れてしまうので気をつけます。

また、マージョラムは夏の暑さには強いですが、乾燥には要注意。株元をマルチングして乾燥しすぎを防ぎます。真夏の午後の日ざしには日よけをしてあげたほうがよいです。

どのハーブにもだいたい共通しますが、マージョラムの葉を保存用に刈り取るのは、開花の直前にします。花が咲くと株が弱って香りが落ちてしまうのです。7月ごろから開花するので、その頃に収穫します。夏に刈り込んでも、秋にはたっぷり繁ってくるので、また収穫できます。

たくさん収穫したら、いつでも使えるように乾燥させるか冷凍して保存します。オリーブオイルやお酢につけて香りづけしてもよいです。基本の3つのハーブ(タイム、ローズマリー、セージ)とともに刻んでバターやチーズに混ぜて冷凍しておいても便利。マージョラムの香りはタイムとあわせて使うと相乗効果があるそうです。

冬になると、生長がとまります。寒さには強く越冬できますが、マルチングなどの保護が必要です。多年草なのですが、1年草として育て、春にまた種をまいて株を刷新するのもよいでしょう。または、夏の元気な時期に挿し芽し、冬の間室内で管理して来春に備えるのも方法です。

※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。

カテゴリ: ハーブの横顔  |  0 Comments
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