コアラの食物やフラワーアレンジの花材として知られるユーカリは、実に500種もの種類があり、変種も含めると700種とも1000種ともいわれています。生長がとても早く、原産のオーストラリアでは70メートルを越える大木になります。
葉から得られるエッセンシャルオイルは、ペパーミントをさらに強くしたような鋭い香りで、ユーカリオイルとしてアロマテラピーに使われています。オーストラリアでユーカリオイルが発見された18世紀後半には、その香りから、『シドニー・ペパーミント』と呼ばれていました。
■ ユーカリの利用法と効能
ユーカリのエッセンシャルオイルには、さまざまな薬効があります。エッセンシャルオイルは、葉を水蒸気蒸留して抽出します。種類の多いユーカリですが、アロマテラピーのエッセンシャルオイルとして用いられるのはその中でも数種に限られ、一般的な品種が『タスマニアン・ブルーガム』という種類です。ほかに、レモンの香りの『レモン・ユーカリ』のオイルにも薬効を期待できます。
防腐・殺菌、解熱、消炎、抗ウィルス作用にすぐれているので、風邪が流行している時期に、水で薄めたものでうがいをしたり、エアーフレッシュナーとして空気中に散布したり、アロマポットで焚いたりすると、風邪の予防になります。風邪をひいて鼻水、咳、痰がひどいとき、花粉症の季節に鼻がつらいときにも、効果があります。ドライの葉をハーブティにして飲んでもOKです。ミントやタイムもプラスしてハチミツを加えると、飲みやすいうえにさらによい効果を期待できます。
そのほかにも健康面で期待できる薬効には、やけどや切り傷、皮膚炎、虫さされの消毒・消炎、筋肉痛や打撲の痛みの軽減、糖尿病や高血圧の改善(血糖値を下げる作用)、コレステロールの低下などがあります。また、ユーカリの香りは蚊が嫌うので、マラリアが流行した地域の湿地帯にユーカリを植えたそうです。お部屋の中でアロマポットを焚いてもよいですね。
どうも集中できないなというときにもユーカリの香りは効果があります。ただし、ユーカリは多量を摂取するとからだに有毒です。長期にわたる摂取や、過剰摂取はしないよう注意してください。
花粉症の季節が憂鬱な方や、風邪をひきやすい方、蚊が多くて困る!という方、是非ユーカリの威力を試してみてください。
■ ユーカリの育て方
日本で育てているものは原産地ほど大きくはなりませんが、お持ちの方はすでに経験されているように、あっという間にスクスクと何十センチも伸び、大きく育つ植物です。4~5メートルにすぐ育つので、小さめに仕立てたい方は鉢植えにします。
どんどん伸びる茎や枝はこまめに少しずつ切って利用します。10月下旬~11月には、冬に備えて剪定してまとめて収穫し、ドライにしたり、エッセンシャルオイルを抽出して保存します。ドライのリースにしても素敵です。
切り取った枝は残念ながら挿し木には適しません。増やすときには春か秋に種をまきます。移植を嫌うので小さめのポットに直まきして、本葉が4枚ほどになったら鉢に植え替え、それからは生長具合にあわせて鉢を大きくしてあげます。
肥沃で水はけのよい土に植え、日当たりのよいところであれば、ときどき肥料を与えるだけで、どんどん育ちます。乾燥にも比較的強いです。耐寒性はありますが、レモン・ユーカリは他のユーカリに比べて耐寒性が劣るので、冬は室内に取り入れて管理します。
ユーカリを植える際の注意点をひとつ。ユーカリの根は有毒物質を分泌するので、近くに植えている植物たちの生長を抑えてしまう作用があります。また、根ばりするので、寄せ植えにも注意が必要。すぐに大きく育つので、ユーカリだけで鉢植えにしてその存在感を楽しみ、豊富な薬効を利用したり、フラワーアレンジやドライリースにするとよいでしょう。
※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。
0 Comments
You can be the first to comment!