地中海うまれの「海のしずく」と呼ばれるハーブ「ローズマリー」。細い葉が対照につく枝を指でなでると、ピリリとした独特なすがすがしい香りがします。
剪定のたびにリースをつくって部屋にかけておくと、部屋の中のにおいを消し、空気をきれいにする作用があります。これは、昔から使われているローズマリー利用法のひとつ。ローズマリーのリースは、花のない状態でもさまになりますし、もちろん花つきでも素敵です。
■ ローズマリーの利用法と効能
お料理に加えたり、抽出液を利用することで、心身ともにさまざまな効果を得られます。お風呂に入れると、血行不良を改善し、新陳代謝を高め、さらには筋肉痛をやわらげてくれる効果まであります。すっきりとよい香りで気分もリフレッシュ。また、抽出液をうがい薬や切り傷に使用すれば、穏やかな殺菌作用があります。
お料理には特に欠かせないハーブ。クセのある肉や魚の料理に使うと、ひとあじ以上違う風味が加わります。ガーデンパーティの際には、株から一枝とってオリーブオイルをつけ、お肉の表面をなでながら焼くパフォーマンスを。香りよいおいしい焼き上がりになります。葉には酸化防止作用があるので、肉・魚の保存用に刻んだものをまぶしておき、そのまま焼いたらローズマリー風味の一品のできあがり。
ローズマリーと特に相性がよいのが、ジャガイモ、鶏肉です。鶏肉のクリーム煮には、ほんの少しのローズマリーを加えます。刻んでバターに混ぜたローズマリー・バターは、ジャガイモのソテーを作るときに重宝します。室温でやわらかくしたバターに、きざんだローズマリーの葉、レモンのしぼり汁、お好みで塩・コショウを加えてよく混ぜるだけ。冷凍保存もできます。
煮込み料理に欠かせないブーケガルニには、月桂樹(ベイ・リーフ)、タイムとともに、ローズマリーを加えます。また、ビスケットなどに焼きこむと甘さが引き立ちます。
ローズマリーには消化を助ける働きがあるので、脂っこいお料理を食べたあとのハーブティにおすすめです。食べすぎておなかがいっぱいで元気の出ないときには、ローズマリーのハーブティをどうぞ。
ローズマリーには、立性とほふく性があります。立性のものは2メートルほどの高さになり、見事です。刈り込みを工夫してスタンダード仕立てにしても素敵。伸びる枝をこまめに刈り込んでいくだけでも、こんもりとした形のよい株になります。ほふく性のものは、好みの形に型どった針金などに這わせます。ローズマリーの若い枝は、生長するとタイムと同じく茎が木質化します。
秋から翌春に小さな花が咲きます。花色は白っぽいものから薄い水色、ブルー、紫色、ピンクまでバリエーションがあります。ローズマリーは、必要なときにいつでも収穫できますが、特に香りがよいのは、他の多くのハーブと同じように開花前。花が咲く前にまとめて収穫して保存してもよいです。
鉢を置く場所、植える場所は日あたりと水はけのよいところに。土は乾きめが好みなので、水をあげすぎないように注意してください。木の灰や卵のからなどを混ぜた石灰質の土で育てると、株は小さめになりますが、香りの強いローズマリーになります。
半耐寒性なので、氷点下になる場所は注意が必要です。冬は日あたりのよい室内に入れたほうが安全です。立性のほうが少し寒さに強いです。
※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。
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