『植物文化人物事典
~江戸から近現代・植物に魅せられた人々~』
大場秀章 編
日外アソシエーツ
『植物学や農学、園芸学などの学問分野の専門家に限ることなく、篤志家、詩人や歌人、画家、政治家など、多少なりとも植物文化関わりのあった故人の方々を網羅し、彼らの略歴と植物文化への貢献、参考となる資料を記載・集大成した人名事典』とまえがきにあるとおり。顔写真(一部)、著書も掲載されている。
巻末に「人名索引」と「事項名索引」があり、事項名索引をあ行から順に見ていると、植物にまつわる学問が幅広く、細分化されていることがわかって興味深い。気になる分野に記載されている方々のページを開いて略歴などを拝見すると、やはりほとんどの人が幼少の頃から植物好きだった様子がうかがえる。好きなことに幼い頃から気づいてそれをまっしぐらに研究する人生って素敵だなと思う。または、こんな分野から植物の世界に進んだんだな、という方もいらっしゃったり。
事項名が学問的なことばかりでないところも楽しい。『入谷の朝顔』なんて項目もあり、成田屋留次郎さんという方が載っていた。浅草の植木屋の次男として生まれ、独立して入谷で植木屋を営んでいた方だそうだが、大の団十郎贔屓で成田屋の姓を名乗り(本名は山崎)、『暫』の衣裳と同じ渋色のアサガオ『団十郎』を作り出した人なんだそう。入谷には珍しいアサガオがなく、当時の先進地の大阪で種を仕入れて育種を重ねて珍種を生み出した。『入谷の成田屋』と愛好家の中で知名度が高かったらしい。
こんな脱線をしつつ、時間のあるときに気になるページを開いては読み、開いては読み、を繰り返し楽しめる。『事典』的使い方だけでなく、植物に魅せられた人々の人生も垣間見られる本。
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