『勇気』の象徴 「タイム」

2011年6月13日

レモンタイムタイムには数百もの種類があり、立性とほふく性(這うように伸びるタイプ)の大きく2つに分類できます。最も一般的なコモンタイムは立性で、生長につれ茎が木質化し、草丈は30~40センチほどになります。煮込み料理に欠かせないハーブとして常備されている方も多いですね。

ほふく性のものは横に這うように伸びて広がり、お庭のグランドカバーとして大切な存在。細かく小さな葉は、濃いグリーン、ライムグリーン、黄色の斑入り、白の斑入りなど、色の種類も多いので、色の異なるものを交互に植えて、パッチワークのような庭をつくることもできます。

タイムはシソ科の植物で、和名は『ジャコウソウ』といいます。学名のThymusは、ギリシャ語で『勇気』の意味をもつthymonから来ています。花言葉は『勇気』。古代ギリシャ時代には、兵士たちが勇気を出すためにタイムのハーブバスに入ったり、いけにえを捧げる際に祭壇でタイムを焚いて使ったといわれます。中世ヨーロッパでも、『勇気』『活動』の象徴として、刺繍などのモチーフになりました。

ときには鋭さを感じるほど強く香るタイムには、ティモールその他のエッセンシャルオイルが含まれています。このオイルには強い殺菌力と免疫性を強化する作用があり、興奮作用効果もあります。古代ギリシャから『勇気』の象徴とされていたのはこの効果によるものでしょう。

ブーケガルニ■ タイムの利用法と効能

タイムの殺菌・消毒作用は、わたしたちの生活の中でもちろん生かせます。風邪をひいてのどが痛く、痰がとれないときには、タイムのハーブティをお試しください。はちみつを入れて飲むと、せき、風邪、のど荒れの症状によく効きます。タイムには消化促進の作用もあるので、食後のお茶としてもぴったりです。飲みすぎた夜や二日酔いの朝に一杯飲むとすっきりします。

タイムだけでは飲みにくい方は、紅茶の葉をいつもより量を少なめにして、タイムをひと枝加えてみましょう。そのときは、アールグレイなど独特な香りのある茶葉を使わないほうがタイムそのものを楽しめます。もちろんティバッグでもOK。

ハーブを使ってご自身でクリームやローションを作られる方は、タイムのマイルドな消炎効果をにきび対策に利用できます。また、お風呂に入れると筋肉痛に刺激効果があるので、たくさん走った後や、ひさしぶりにからだを動かした日、スポーツジムでがんばった夜には、タイムのお風呂で一日の疲れをとります。

ただし、子宮に刺激を与えてしまいますので、妊娠中の方、とくに初期の方はタイムは摂取しないようご注意ください。

お料理でのタイムの使い方も少しご紹介しましょう。フレッシュなものがもちろん香りがよいのですが、生育旺盛な香りのよい時期にたくさん刈り込んで乾燥させておいても十分利用できます。タイム、ローズマリー、ローレル(月桂樹の葉)などを束ねた、シチューやスープに欠かせない『ブーケガルニ』。いつでも使えるように乾燥させて保存しておくと便利ですね。

生のものを使える時期は、是非フレッシュな風味をそのまま楽しんでください。サラダにつかったパセリの茎やセロリの葉を一緒に束ねて煮込み料理に加えると、おいしく、香り高く仕上がります。タイムは長時間熱を加えても香りが変わらないので、煮込み料理の風味づけに適しています。

小さな葉をこそいで刻み、バターやチーズに混ぜて使うのもおすすめです。バター100グラムに刻んだタイム大さじ1杯くらいが目安。お好みで量を加減してください。少し室温でやわらかくしたバターやクリームチーズに練りこみ、時間をおいて味をなじませます。パンに塗ってカナッペ風でも、チーズはそのまま食べてもおいしくて、冷やした白ワインとの組み合わせは夏のおもてなしにぴったりです。お酒に弱い人はりんご味のシードルをちょっぴり飲んでみてください。レモンの香りのレモンタイムを使うとさわやかな香りが楽しめます

タイムは野菜、肉、魚、卵など、あらゆる材料と相性がよいので、さまざまなお料理に利用できます。ローズマリー、セージなどの他のハーブと組み合わせると、お料理がますます楽しくなります。刻んだものをパン粉に混ぜて揚げ物にしたり、ひき肉に混ぜてソーセージを作ったり、マリネ液をつくって鶏肉やえびを漬け込んでから焼いたり。刻んでいる間もキッチンにはよい香りが広がります。ひと枝を小さなびんにさして食卓に飾り、、その姿を見ながらの食事もいいものです。育てているからこその楽しみですね。ご家庭に1~2株は必ずほしい基本のハーブのひとつです。

タイムの花■ タイムの育て方

タイムは温度さえ適温(15~20度)に保てば、いつでも発芽します。一般的には春(3月中旬~6月)と秋(9~10月)に種まきしますが、秋まきは苗が小さいうちに冬の寒さにあたるので、春まきがおすすめです。早めの春にまいておけば、梅雨ごろには大きく生長して利用できます。株分け、挿し木で増やすことも簡単です。

タイムはじめじめとした湿気が苦手で、どちらかというと乾燥気味が好きです。日当たりのよい場所を選んで、水はけのよい軽い土に植えます。暑さには比較的強いのですが、真夏には木陰になるような場所で直射日光はさえぎるようにして休ませるほうが安心です。特に日本の夏は湿度が高いので、高温と湿度で株が弱りがち。繁り過ぎたところを切って風通しよくしてあげます。梅雨前にも思い切って刈り取ります。気温の上昇とともにどんどん生長するので、窒素を控えたリンとカリの多い肥料を追肥します。

香りよいタイムを保存したい方は、開花すると葉がいたむので、開花直前に刈り込んで乾燥させます。刈り込んでしまっても大丈夫。ちゃんと新しい芽が出て株が充実します。虫はつきにくいので、多湿による蒸れさえ気をつければ、育てやすいハーブです。秋に紅葉する種類もあります。

冬の間は戸外の日だまりに置いて越冬できます。生育はとまりますが、極端に乾燥させて枯らしてしまわないよう水やりを忘れずに。逆に水のあげすぎは根を腐らせてしまうので、晴れの日が続いたら注意して様子を観察してから水をあげましょう。

摘みたてのタイムは、小さな葉のみずみずしさはもちろん、ゆるくカーブした細い茎が実にいい形をしています。その形をそのまま、小さなハンバーグや、ホットケーキ、ビスケット、スコーンなどに貼りつけて焼くと、いつもとちょっと違った趣と香りを楽しめます。硬い茎を使うと、口に残ってしまうのでやわらかいや穂先を使ってくださいね。

※このコラムは、毎日新聞社さんのサイトに「ハーブの横顔」という題で、2002~2005年に掲載させていただいたものです。


カテゴリ: ハーブの横顔  |  0 Comments
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